琵琶湖移住計画 その1
時々乗車する湖西線の車窓に、いつも釘付けだった。
そこからは、水平の琵琶湖と低い家並みがのどかに広がり、反対側の車窓には雲をいただいた比叡山や雪をまとった比良山がドンと屹立している。どちら側の客席に座っても先の景色が気になってくるのだ。
子どもの頃ドライブで連れて行ってもらったサンケイバレー(カーレーターが楽しかった)、初めての冬山訓練、比良山スキー場(数年前に閉鎖)にテントを張って3日間スノボに明け暮れた事、湖ではバスフィッシング、ウインドサーフィン、カヤック、キャンプ、ロードバイクで琵琶湖一周などの思い出がある。
車窓から見えるのは、実はそんな昔の思い出かもしれない。
4月に子どもが誕生するのを機に、この豊かな自然の一角に移住できないか、考えてみた。
大阪に引っ越した4年前のときもこのことは考えていたが、インターネットで検索する程度だった。
今回は具体的に現地に足を運んだ。
新築など端から頭にない、金もない。
二人が好きな和風の中古物件。まだ、おじいちゃん、おばあちゃんが住んで介護に明け暮れているお家だった。
一応の内覧を済ませ、琵琶湖に出てみる。

がつん、とやられてしまった。
湖上に満月があかりをともし、足元に波の音が右に左に静かにひろがる。
二人はもうだめだった。
ここに決めた。

ここから勤務地まで遠い。
僕が直線距離で2倍半になる。
現実と理想。
実生活と感傷生活。
先が○で、後が×。常識的判断にゆだねれば、そうなる。
すべて感傷の中で決めたことに、不安はある。
しかし、人間50数年生きてきたのだ。自分の感性に少しくらいの自信を持っても良いと思っている。
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